鑑定の際の輸出入手続き
前回、怖いお話をさせていただきました。
今回、実際に鑑定に出す際にどのように手続きを行うのか、をみていきます。
鑑定後再輸入しますので、輸出の際、再輸入免税手続きを行う前提での輸出申告を行います。
<輸出の流れ>
まず、準備です。
①鑑定に出すコインの写真撮影(表面、裏面)
②各コインの重量の測定
実際に税関で重量を測られることがあります。
きちんと0.1g単位でみられます。
③ ①、②を記載した書類
その際、下記も付記します。
- いつ鑑定から戻ってくる予定なのか
- 鑑定(リホルダー、通常の鑑定、修復サービス、鑑定会社の写真掲載間違いによる写真撮影のため、など)の理由
④輸出用のインボイスの作成
こちらは、購入した際の通貨毎に作成します。
当社のお客様から鑑定を依頼された場合、購入を証明する領収書をいただいています。
そして、直接海外から輸入した場合は、輸入した際の消費税支払いの証明書も受領しています。また、場合によっては、購入されたディーラーがきちんと輸入消費税を支払っている旨を確認するため、輸入許可書ももらいます。
⑤NGC又はPCGSのSubmission Form
上記の書類を揃えたら、ある、専門の輸送業者(保税地域扱い)にコインを持ち込みます。
ただし、業者は、再輸入申告手続きは行わないため、当事者が直接税関に出向き、説明し、輸出手続き、再輸入手続きを行います。つまり、輸送会社にコインを持ち込んだ後、税関まで輸出手続きのため、向かいます。
そして、輸出許可後、輸出許可証を輸送業者に持っていき、輸出手続きは、完了となります。
<再輸入の流れ>
現在は、半年以上かかることも多いですが、鑑定後、輸送業者と鑑定会社(NGC,PCGS)双方と連絡を取り、輸送業者に取りにいってもらいます。
と、その前に、ここで忘れてはいけないのですが、NGC社は、請求書に鑑定番号が記載されておりません。そのため、請求書に鑑定番号記載してもらうように依頼する必要があります。
鑑定会社も忙しいため、輸出手続きに、結構紆余曲折がある場合があり時間がかかるときもあります。
そして、やっと日本の輸送会社の保税倉庫(といいましても事務所)に到着します。
これからがまた、大変です。
税関に再輸入免税での輸入申告を行います。
この際、それぞれのコインの流れを説明できるようにすべての資料を用意しておく必要があります。
裸コインの輸出の際の書類→鑑定依頼書類(Submisson Form)→鑑定会社の請求書(鑑定番号が記載)
ここで、部門長の許可を得られれば、問題なく、再輸入免税での許可となります。
以前記載させていただきましたが、鑑定は、本来、再輸入免税とはならないため、部門長判断で例外的に許可されています。「再輸入免税」とは、関税定率法では、「本邦から輸出された貨物でその輸出の許可の際の性質、形状が変わっていないもの」を本邦に輸入する場合に消費税が免税されるのです。
そのため、中身のコインが変わっていないことは、写真で分かりますが、鑑定に出すということは、スラブケースに入れられて戻ってきます。そうしますと形状は、変わっており、その新しいものは、鑑定番号が付与され、別物、若しくは、加工されたものとなり、消費税は、徴収されることが基本となります。通常は、職員は、上官を説得するのが大変なこと、そして、加工によって価格(課税価格)が上下したことの立証が難しいため、加工の差額ではなく、そのコインの購入価格に10%を付与した消費税金額を課税することをしたい気持ちになる方向になります。
ただし、上記のように1枚1枚写真撮影から、きちんと書類を揃えて申請している業者はほとんどおりません。おそらくいないでしょう。
かなり、しんどい作業なのです。
きちんとした書類を揃えずに再輸入免税を繰り返すとどうなりますでしょうか?
実際にきちんと書類を揃えずに申請している殆ど?すべて?のコイン商が繰り返しているため、一部の税関職員の中には、認めるべきではないとの声が強くなっております。
(詳細は、影響が大きいため、ここでは書けません)
そのため、将来は、鑑定後の輸入の際は、免税ではなく、課税(輸入消費税を再度徴収)という流れになると思います。
なぜ、きちんとやらないか、それは、上記のように1枚1枚の管理がものすごくコストがかかり、正直、相当、しんどいのです。再輸入免税が認められなければ、消費税を再度支払わなければならないという長期間の精神的負担、写真撮影から1枚1枚のコインの流れを説明できるように整えておく、毎回、税関に直接行き、説明する、結構、負担の大きい業務の割に手数料ゼロでも感謝はされず、なぜ、他社と比べてそんなに高いのか!と当社に不信感しかわかないため、当社としては、鑑定代行の、受付ができない状況ですので、ご理解下さい。
他社がきちんとコストに見合った手数料を取っていただければ、正当な流れにはなっていくとは思います。
自社にいい鑑定を残す、若しくは、贔屓のお客様へ、いい鑑定を渡すので、安くしてもトータルとしてはコイン商としては利益が出ます。
ただし、当社は、鑑定を受ける場合、お客様のコイン毎に管理しているため、他のお客様のコイン、当社のコインと混ざることはないのです。
そして、専門の輸送業者への支払いもみなさんの想像よりはるかに高いのです。
そのため、今まで、他のディーラーから相談があり、当社は、サポートはできますが、これくらいのコストがかかり、当社は手数料はいらない、きちんと申告をしてもらいたいけだけです、と伝えても誰も一回も依頼してきたことはございません(苦笑)